抄録
ヒトスジシマカにチクングニアウイルスを感染させた場合,中腸では細胞質より出芽buddingで細胞質陥入部に形成される過程が観察される.ウイルスに感染した唾液腺細胞では急激なウイルス増殖が観察されるが,ウイルス形成の形態的観察では中腸細胞と異なっていた.唾液腺細胞でウイルス密度が高く観察された部位は細胞周辺の空胞であった.空胞内には完成したウイルス粒子(成熟ウイルス)が多数観察されたが,中腸細胞におけるウイルス形成のように細胞膜を獲得して封入体を形成する過程は全く観察されなかった.少数の出芽の痕跡を示す粒子がみられた。この粒子を新生ウイルスと判別して空胞におけるウイルス形成を考察した.一方,原形質膜陥入部でも一列あるいは2,3列の行列状あるいは塊でウイルス粒子が観察された。ここでも新生ウイルスと成熟ウイルスを区分してウイルスの形成過程を推定した.また細胞質内でもウイルス形成がみられたが,五十嵐(2003)の示したウイルスファクトリーと類似された部位が観察された.