抄録
2004年2から3月にトリインフルエンザの大流行が起こった京都府丹波町の浅田農産船井農場の周辺を視察し、クロバエ類を中心とした昆虫学的調査を実施した。養鶏場から600から1,000mに位置する4ヶ所、2,000から2,250mに位置する2ヶ所で、持参した魚肉に飛来したハエ類を採集した。2日間の調査でオオクロバエを主とするハエ類約900頭を捕獲した。時間当たり密度は全体の平均が48頭/時間で,養鶏場に一番近い採集地で最も高く134頭/時間,養鶏場から約2,250m離れた採集地で最も低かった(20頭/時間).季節移動によって繁殖地に到達したオオクロバエがどの程度の範囲を移動しているのかを知るために,トリインフルエンザの流行が我が国で最初に確認された山口県阿武郡阿東町の養鶏場周辺を調査地として,流行の起こった1年後(2004年12月)にmark-release-recapture法で調査を行った.実験は2004年にオオクロバエの季節移動が確認された1ヶ月後の12月初めに実施した.養鶏場を中心として半径1キロ以内に5ヶ所の採集地を選んだ.魚肉に飛来したオオクロバエを捕獲し塗料で胸背部にマークした後,捕獲された場所から逐次放逐した.時間当たり密度は最も高い採集地で107頭/時間,最も低い採集地で23頭/時間で,全体の平均は41頭/時間であった.2日間に約1,900頭のオオクロバエをマーク放逐し,このうち42頭が再捕獲された.マーキング中に同じ日に他の採集地でマークされた個体も8頭捕獲された.放逐された地点と再捕獲された地点の直線距離に基づいて再捕獲された個体の平均移動距離を求めたところ1日あたり713から1,000mであった.また観察された最大移動距離は2kmであった.Lincoln法によって調査地全体の個体数を推定したところ,1日目59,550頭,2日目143,171頭という値が得られた.