抄録
石川県では、毎年のように数例のツツガムシ病が散発的に発生している。2004年、我々が経験した症例は、能登半島鹿西町(現、中能登町)のもので、現地調査により、能登半島で初めて、タテツツガムシを確認した。このツツガムシは、患者の血清検査より推定した感染リケッチア(Kawasaki型)の主要な媒介種であることから、今後も患者の発生が懸念される。然るに、石川県(特に能登半島)におけるツツガムシ病に関する基礎調査は、ほとんど行われておらず、至急、その実態を調査する必要がある。一方、マダニ媒介性疾患については、近年、ライム病や紅斑熱の患者が近隣の県で認められたことから、石川県にも今後、発生する可能性が考えられる。マダニ刺症例は、我々の経験だけでも、年に数例におよんでおり、その実態調査および媒介種の把握などが必要である。そこで、これらの地域において、関係の病原体調査に向けて、植生上からツツガムシやマダニ類を採集し、また病原の保有者となる野鼠を得てそれに寄生するダニ類の状況を調べるとともに、それらが保有する病原体について血清抗体の検出を試みた。
2005年4月27日から12月1日の間に、延べ23ヶ所で生捕トラップを仕掛け、23匹の野鼠を得た。このうちアカネズミ16匹中5匹に脾腫を認め、7匹にバベシア様の赤血球内寄生原虫を認めた。ツツガムシ病患者発生地域付近(現、中能登町)で捕獲したアカネズミからは、吊り下げ法で多数のツツガムシが回収された。また、患者宅の裏山では、10月19日より12月1日まで、見取り法でタテツツガムシが採集された。一方、マダニ類に関して、4月にタネガタマダニ刺症例を1例認めた。また、今回の吊り下げ法でマダニが分離できたアカネズミは5匹で、チマダニ類の幼若虫が多かった。旗振り法では、キチマダニが多く採集された。なお、血清抗体については、現在検討中であり、あわせて報告する。