日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第62回日本衛生動物学会大会
セッションID: B06
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新型走査電顕画像によるマダニ幼若虫の有用分類の試行
*矢野 泰弘高田 伸弘
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抄録

マダニを同定するための各顕微鏡には以下の特徴がある.・双眼実体顕微鏡:倍率をあまり上げられず,解像度も低い.主に成虫の同定に用いられる.・光学顕微鏡:表面の構造観察には,実のところ苦手である.細かい部分はピントをずらしながら観察しなければならず,もし試料が不透明であれば打つ手がない.・走査型電子顕微鏡(SEM):光学顕微鏡と比較して焦点深度が深く,広範囲に焦点の合った立体的な像を得る事ができる. このたび,本学に新型走査型電子顕微鏡(JSM-6390)が導入されたが,従来型との相違点は,まず低真空での観察が可能になったこと.すなわち臨界点乾燥や表面の金属コーティングの行程を省略できる.また,写真をデジタルデータとして保存可能になったこと.それによりこれまでのフィルムの現像・焼付けなどの暗室作業から開放される.そこで,淡路島で採集した,キチマダニ,フタトゲチマダニ,ヤマアラシチマダニおよびタカサゴチマダニの若虫と北海道産ヤマトマダニおよびシュルツェマダニ幼若虫を材料に電顕観察を行った.マダニの脱水をアルコール系列で行い,その後,試料台の上に接着させ,実験室内で乾燥させた.試料ごとに電子線量の微妙な調整は必要ではあったものの,電子線のチャージも少なく良好な像が得られた.また,パソコン上で画像のコントラストや明るさを調整できるので,焦点さえ合っていれば充分に活用できる.

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© 2010 日本衛生動物学会
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