抄録
琉球列島には現在72種の蚊が分布するが、そのほとんどが森林内に生息しており、各種蚊の吸血源動物、特に冷血動物を吸血する蚊についてはほとんど明らかにされていない。夜間、蛙や蛇に吸血中の昆虫に遭遇することは稀である。そこで演者自身、機会あるごとに森林内で蛙や蛇など冷血動物を吸血する昆虫の撮影に焦点を絞って観察すると同時に、野性生物動物保護センター(環境庁)などの研究者に両生・爬虫類を吸血するハエ類の生態について講演し,喚起を促した。近年、デジタルカメラの普及により、野外で小動物の接写撮影が容易になってきた。2006年から2008年までに蛙、蛇,トカゲモドキを吸血中の次の吸血性昆虫が沖縄本島、奄美大島、徳之島、西表島で撮影された。
コガタクロウスカ・Culex (Mochthogenes) hayashii ?*(オットンガエル吸血)、イエカの1種?*(ナミエガエル吸血)、オキナワチビカ・Uranotaenia (Ura.) annandalei (ホルストガエル)、ストウンチビカUranotaenia (Pfc.) jacksoni (オキナワアオガエル吸血)、キンパラナガハシカ・Tripteroides bambusa ?*(ヤエヤマアオガエル吸血)、サシチョウバエの1種Sergentomyia sp. (ヒメハブ、クロイワトカゲモドキ、オビトカゲモドキ吸血)、ニホンチスイケヨソイカ・Corethrella nippon (ナミエガエル吸血).なお、「?*」を付した蚊は顕微鏡下での同定がなされていない。