抄録
Culicoides属ヌカカは，ヒトを始め温血動物から吸血する種を多数含み，人間および家畜の衛生上重要な昆虫である.しかし，都市部におけるCulicoides属ヌカカの生息状況に関する知見は非常に少なく，ヌカカによると思われる虫咬症被害があった場合も，原因昆虫の特定が困難である.そこで，愛知県名古屋市内で行った昆虫調査 (蚊のウエストナイルウイルス調査 2005~2010年，愛知万博ささしま会場調査 2004~2005年，生物多様性条約会議会場調査 2009~2010年など) において，ドライアイス併用吸引トラップ，交流電源型ブラックライトトラップなどにより捕集された Culicoides属ヌカカについて調査を行った .その結果，ニワトリヌカカCulicoides arakawae 175頭，ミヤマヌカカC.maculatus15頭，キブネヌカカC.kibunensis8頭，イソヌカカC.circumscriptus1頭，ホシヌカカC.punctatus1頭，および未同定種 1種 62頭，合計 6種 262頭が見いだされた.未同定種は，翅に薄い斑紋を有し，第 2径室が暗色，両複眼が離れる，受精嚢が 2個などの特徴を持つことからOecacta亜属に属すると考えられた.
