抄録
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))病棟では多数の児者が長期入院生活を送っており、感染症の流行が起きやすい環境である。国立病院機構でのアンケート調査では、毎年0.5〜1.0回/病棟の頻度で感染症流行があると考えられた。国立病院機構愛媛病院では重症児(者)病棟での感染症流行を2007年より調査を続けているが、流行する感染症の半数以上が病原体不明の呼吸器感染症の流行であったため、2009年よりこの呼吸器感染症の病原ウイルスについて検索を続けている。その結果、ストレプトコッカスやマイコプラズマの他に、複数の呼吸器ウイルス(ヒト・メタニューモウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、パラインフルエンザウイルスなど)の流行が同定された。それぞれの病原体と臨床経過や検査結果を比較すると、病原体により流行状態に特徴が見られた。ストレプトコッカス検出例は散発的で感染流行はみられなかった。マイコプラズマ感染症は小流行にとどまり、肺炎の合併が多くみられた。これらに比べて、呼吸器ウイルス(ヒト・メタニューモウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルスなど)の感染症では、病棟内で広汎に急速に拡大する傾向がみられた。ライノウイルスは流行性が最も高く、急速な感染拡大がみられたが、症状は軽く、微熱と鼻汁が数日続く程度の発症が多かった。それに比べて、ヒト・メタニューモウイルス感染の流行では高熱が1週程度持続する発症者が多く、胸部X線での特異な像と血中単球の増加が特徴的であった。流行する病原体ごとの特徴をとらえて、その病原体毎に適切な対応を取ることが流行拡大の防止に重要であると考えられた。