2013 年 38 巻 2 号 p. 342
はじめに 重症心身障害児者(以下、重症児(者))は、異常筋緊張など多様で重層した原因により症候性側弯が進行する。近年、3点固定を軸に側弯進行予防に効果的な動的脊柱装具(プレーリーくん)が開発された。梶浦らと筆者らも重症児(者)の症候性側弯に有効であることを報告した。今回、側弯予防以外にも装着によってPTと家族が共有した側弯改善以外の身体機能に及ぼす効果について3症例(痙直型四肢麻痺・A1)体験したので報告する。 症例の概要 全対象者と親に対して、事前に本研究の目的と方法を説明し、研究協力の同意を得た。症例A:18歳脳性麻痺、重症児スコア6で日常的に過剰な緊張を伴う不機嫌さに困っていた。装着でCobb角は127→112度となり、装着時間は23時間/日で、不機嫌さと過剰な筋緊張が軽減した。症例B:16歳脳性麻痺、重症児スコア24で日常的に排痰困難なことに困っていた。装着でCobb角は91→72度となり、装着時間は20時間/日で、装着によって呼吸状態が改善し、喀痰が容易になった。症例C:25歳脳炎後遺症、重症児スコア3で日常的に夜間嘔吐と不眠に困っていた。装着でCobb角は116→104度となり、装着時間14時間/日で特に夜間装着することで夜間の嘔吐が減少し、不眠が改善した。 考察 プレーリーくんが側弯へ有効なことはCobb角の変化からも顕著であった。側弯進行が胸郭の可動性の減少、呼吸状態の悪化、食道や胃を圧迫し嘔吐などのGER症状を悪化させると考える。本3症例は側弯の改善、呼吸や排痰、GERの改善、良眠の効果が認められた。特に側弯以外の効果を認識した家族ほど、装具装着の頻度や時間も長くなり、さらに側弯以外の効果が高まったことが考えられる。プレーリーくんの特徴である通気性・装着感の良さにも特徴があり、長時間装着可能なことから持続的な効果がみられた。