日本重症心身障害学会誌
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P-2-E-03 重症心身障がい児(者)を看取る過程における看護師の体験
勝手 淳一井上 舞渡邊 泰代
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2013 年 38 巻 2 号 p. 365

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抄録
目的 重症心身障がい児(者)病棟(以下、重症児(者)病棟)に長期入院中に、末期がんで亡くなった患者を看取る過程での重症児(者)病棟の看護師の体験を明らかにすること 研究方法 A病棟で末期がんのために亡くなった患者に関わった看護師に調査協力を依頼し、同意の得られた者を対象に、自作の面接ガイドを用いた半構造化面接および看護師の特性を問う質問紙調査を行った。面接では診断がわかってから看取るまでの過程で看護師が感じたことなどを尋ねた。面接は、承諾を得てIC録音し、逐語録を作成、質的分析を行った。なお、本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。 結果 対象の背景 16名から同意が得られた。看護師経験年数11カ月〜34年(平均11年3カ月)、重症児(者)病棟経験は、11カ月〜20年(平均4年2カ月)であった。 看護師の体験 看護師は“死というのが頭の中をよぎった”など「死の可能性を意識する」中で、「今後の関わりに戸惑いを感じる」体験をしていた。そして、“反応がないことも多かった”など「反応が少ない」ことで、「これでいいのか不安になる」と感じながらケアを行っていた。しかし、“ボディータッチをよくしていた”など「スキンシップを増やす」ことで、「相手の反応を見てケアを行う」ようになり、「患者の反応からケアの意味を感じる」ようになっていた。死別後には、“死を受け入れるまで時間がかかった”と「看護師自身の悲嘆」を体験しながらも、今回の経験を通して“悔いのない看護”や“患者が楽しかったと思える看護を提供する”ことを考えるようになっていた。 考察 重症児(者)病棟の患者は長期入院のため、病棟が生活の場である。看護師は重症児看護の特徴とターミナル期看護の特徴を踏まえて患者と向き合い、日々看護を提供している中で感じられる一人ひとりの患者が出すわずかなサインを受け取る経験を通して、戸惑いながら一人の人として関わることの大切さを体験していることが示唆された。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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