日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-C12 重症心身障害児(者)の自己刺激行動に対するアプローチの検討
西村 弘太郎森田 勝敏河合 美江
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2017 年 42 巻 2 号 p. 179

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抄録
はじめに Aさんは感覚的遊びに没頭しやすく、一日を通して口腔内に手を入れる自己刺激行動(以下、手なめ行為)が頻繁に確認されているため本研究を行った。 目的 手なめ行為の軽減のために分化強化を用いたアプローチ方法を検討する。 方法 1.期間:2016年7月〜10月 2.対象:Aさん 40代男性 胎内感染後遺症 両側停留睾丸 3.方法:(1)現状把握、職員の意識調査(2)記録による観察(3)記録の評価、職員の意識調査(4)介入後の行動変化を記録による観察 4.倫理的配慮:ご家族に書面で研究の趣旨を説明し、署名による同意を得て実施した。 結果 1.介入前後の結果 体重の推移を調査し減少が確認されたため摂取カロリーを増加したが行為の減少は見られなかった。玩具への興味を知るためと、普段の様子と比較するために1種類ずつ提供した。提供する玩具を変更しても手なめ行為の減少は得られず、明らかな興味の差はなかった。その後の観察では、手なめ行為を行う時間に大きな変化は見られなかった。 2.職員の意識調査結果 手なめ行為は感覚刺激と捉えているという意見があり、取り組み後「個別に関わることへの意識が高まった」と回答が得られた。 考察 Aさんにとっての手なめ行為とは常同行動のひとつであり、感覚刺激を得ると同時に安心感を得られる行為なのではないかと考える。 今回の取り組みを行うことで職員間での意識に変化が見られた。 提供した玩具の中でメガネに対する興味が最も強いことが明らかになった。興味のある玩具を提供されると、玩具に対しても手なめ行為に対しても積極的となり、Aさんの活動性が増加したのではないかと考える。 結論 Aさんにとって分化強化としての関わりは、手なめ行為の解消に対して効果的ではなかったが、興味の拡大につなげることができた。また、意識調査より、職員間のAさんに対する意識の向上にもつながったと言える。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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