日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-2-B08 重症心身障害者施設入所者の血清亜鉛濃度
−抗てんかん薬、経管栄養との関連−
大石 勉田村 えり子内山 晃大瀧 ひとみ白井 徳満
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 42 巻 2 号 p. 204

詳細
抄録
目的 てんかん患者は健常対照と比べて血清亜鉛濃度が低値を示すと報告されている。抗てんかん薬の長期投与や相対的栄養不良が原因と推測されているが詳細は不明である。重症心身障害者施設入所者の血清亜鉛濃度を測定し、抗てんかん薬や経管栄養との関連を検討した。 材料と方法 対象は当園入所者174名、職員47名を健常対照とした。血清採取は午前9−11時。亜鉛を比色測定法(アキュラスオートZn)で測定した。統計的方法はStudent's t-test、Pearson's chi-square test、ANOVAと多重比較である。 結果 入所者と職員の血清亜鉛濃度を比較した。2群間で年齢、男女比に有意の差はなかった。入所者の亜鉛濃度は65.4±11.0 μg/ml (mean±SD) で職員の80.0±7.0 μg/ml と比べて有意の低値を示した(両側検定p=0.000)。入所者を抗てんかん薬使用の有無で比較した。抗てんかん薬使用者は63.3±11.1 μg/mlと無使用者の69.0±9.9 μg/ml と比べて低値を示した(p=0.003)。経管栄養施行の有無で比較すると経管栄養者は62.0±12.6 μg/mlで無施行者の67.0±9.9 μg/ml と比べて低値を示した(p=0.018)。さらに入所者を抗てんかん薬の有無と経管栄養の有無で4群に分類し、対照と合わせて多重比較を行うと対照は入所者4群すべてに対して有意の高値を呈し(p=0.000)、また4群内では抗てんかん薬・経管栄養ともに有の群のみがともに無の群に対して有意に低値であった (p=0.001)。 考察 施設入所者の血清亜鉛濃度は抗てんかん薬や経管栄養の有無にかかわらず健常対照と比べて有意に低値であった。長期間の栄養制限の関与が推察された。抗てんかん薬と経管栄養の共存は有意に亜鉛濃度を低下させると考えられる。低亜鉛血症がてんかんの原因か否かは今後の検討を要する。 結論 入所者は対照と比べて有意に低い血清亜鉛濃度を示した。抗てんかん薬投与と栄養摂取の偏りの関与が考えられる。
著者関連情報
© 2017 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top