日本重症心身障害学会誌
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O-2-C15 名古屋市重症心身障害児者施設におけるリフトに関するアンケート調査と結果報告
千葉 泰弘中村 有里山田 正人二村 眞秀
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2017 年 42 巻 2 号 p. 215

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抄録
はじめに 重症心身障害児者にとって彼らをよく知る看護・介護者の離職は肉体的・精神的な影響を受ける可能性があり、家族にとって不安要素となりうる。 当施設では腰痛等による職員の離職を防止し、働きやすい環境を提供するために、開設当初より安定性の良い天井走行式リフトを導入した。リフトは居室・デイルーム・浴室・病棟トイレなど、日常的に移床・移乗が必要な場所すべてに67機設置されている。今回はリフトの効果をアンケート調査から検討し報告する。 対象と方法 看護師と生活支援員へ開所後2年間に計4回アンケートを実施し、得られた回答を検討した。回答数は、第一回 62名、第二回 68名、第三回 80名、第四回 80名で、いずれも回答率100%であった。 結果 当施設入職前後の腰痛の程度に関する項目では、腰痛の程度を次の6段階に分け(0:痛みなし、1:軽い痛み、2:中等度の痛み、3:かなりの痛み、4:とてもひどい痛み、5:耐えられない痛み)、回答を痛み段階ごとに合計した。入職前後における痛みの程度の変化は、0:1→0名、1:16→22名、2:29→24名、3:45→43名、4:26→6名、5:7→2名であった。1:軽い痛みの群以外は減少しており、4:とてもひどい痛み、5:耐えられない痛みの両群においては、入職前後で減少が顕著であった。 リフト使用による労力の程度は、回答総数の89%が労力の軽減を感じていた。 リフトの使用感については、「移動・移乗介助時の腰の負担が減った」と答えたものが31%で一番多く、次いで多かったのは「時間がかかる」28%であった。 考察 今回の結果から、リフトは病棟スタッフの労力軽減と腰痛予防そして腰痛改善へ導く可能性が示唆された。自由意見からは、「おむつ交換、床マット・床ベッドなど柔らかいマット上の業務で腰痛や膝の痛みが生じる」などリフトだけでは解決できない問題も明確になり、今後の腰痛対策の課題となった。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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