抄録
はじめに 重症心身障害者(以下、重症者)の高齢化に伴い機能低下や新たな合併症の発現が危惧される状況にあり、個々の症例に応じた対応が求められる。今回、微熱と嘔吐で発症し精査の結果、小脳出血と判明し降圧剤治療を継続中半年後に、大脳出血を来した重症者の1例経験したので報告する。 症例 50歳女性、大島分類1で細菌性髄膜炎後遺症の重症者。3歳時に細菌性髄膜炎に罹患し後遺症(四肢麻痺、知的障害、てんかん)を合併した。10歳より当院重症児病棟に入所中であった。2年前に骨粗鬆症による脛骨プラトー骨折の既往があった。2016年6月19日37℃台の微熱と嘔吐がみられ、血液検査、腹部X線検査、腹部CT検査を行い、尿路感染症、胃腸炎の診断で数日間の輸液および抗菌薬の点滴静注で軽快した。その後、食思不振と傾眠傾向が持続し、時に嘔吐も伴うことがあり、首を振らなくなったとの指摘があり、頭部CT検査を7月1日に実施し、右小脳半球の出血を認めた。脳内科、脳外科にコンサルトし手術適応なく、保存的治療にて対応することとなった。小脳出血の原因として高血圧、動脈硬化が推測され、以降降圧剤を常用した。約3カ月間におよぶ経管栄養の時期を経て、ほぼ病前のように経口摂取できる状態にまで回復した。半年後、再び嘔吐と意識障害を来し頭部CT検査の結果、右被殻出血と脳室穿破を認め、その10日後に永眠された。 結果と考察 加齢とともに骨粗鬆症、骨折を経験した症例で、高血圧、動脈硬化が進行した結果、今回の小脳出血を発症した。重度の運動および知的障害があるため、あらたな脳障害の発見に至ることが難しい症例であった。さらに降圧剤による予防治療を実施していたが、半年後に大脳に再出血を来し死亡に至った。入所中であっても高齢化に伴い高血圧をはじめとする生活習慣病の合併が起こる可能性が示唆され、新たな脳障害の発現に注意する必要がある。