日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-2-B24 重症心身障がい児(者)における水痘集団発症の予防策の検討
塚本 智子颯佐 かおり岡元 照秀柳澤 真希子高木 博史細川 武雨宮 伸
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2017 年 42 巻 2 号 p. 221

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抄録

目的 重症心身障がい児(者)施設において帯状疱疹患者からの水痘発症患者の抗体価測定を実施した。その結果から水痘の集団発症の予防策を検討した。 方法 59名が在籍する埼玉県立嵐山郷療養介護棟において、2016年に2度に亘り水痘集団発症があった。水痘発症者8名(男6名、女2名。年齢36〜64歳、中央値46歳)の、水痘抗体EIAIgG(基準値<2)およびEIAIgM(基準値<0.8)を発熱・発疹出現時に初回測定した。また、約2週間以上あけた後にEIAIgGを再検した。 結果 水痘発症者8名いずれも典型的な水疱疹であり、重症化や帯状疱疹は見られなかった。免疫抑制剤の薬歴者はいなかった。水痘既往は1名のみ確認。予防接種は全員不明。発症直後の抗体価検査はIgG抗体陽性6名、陰性2名であった。発症者は隔離しVACV治療を行った。発症者以外の棟内全員にVACVの予防投与を行った。 考察 1.帯状疱疹からの重症心身障がい児(者)の2回の水痘発症があった。今回、利用児(者)と接触しない職員のため、飛沫感染が考えられた。2.IgMは発症5日以上経過しないと上昇せず、集団発生時における初期の水痘罹患の確定にはIgM抗体価の上昇は有効でなかった。3.水痘発症直後IgM陰性に関らずIgG陽性者がおり、ペア血清上昇確認から既感染者の再罹患と考えられた。4.重症心身障がい児(者)施設の長期入所者においては、予防接種および水痘罹患に関らず水痘集団発症が起きる可能性が示唆される。5.感染拡大の予防として潜伏期における抗ウイルス薬の予防投与は水痘の軽症化にある程度有効性はあった。6.本集団のような水痘罹患および予防接種から長期経過している高齢化した重症心身障がい児(者)施設においては、施設内発症時の集団発症予防のためのワクチン接種の適応が課題となる。

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© 2017 日本重症心身障害学会
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