日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-G19 情動の不安定さを呈す症例に対するリフレーミングの効果
中島 陽子江渡 義晃原 寛道
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 42 巻 2 号 p. 263

詳細
抄録

はじめに 不安を抱きやすいという問題がある方に対し、リフレーミングが有効と言われている。リフレーミングとは、行為・行動等を否定的に捉える方に対し、それを肯定的な枠組みに捉えなおしてもらうことで、物事を前向きに考えられるように導く技法である。今回、不安により立腹してしまう症例に対し、リフレーミングによる介入を行った結果、改善を認めたので考察を加え報告する。 症例紹介 脳性麻痺(両麻痺)を持つ40歳代男性。物への執着が強く物の紛失を恐れ、情動が不安定になる。そのため、たびたび立腹し興奮状態となり、暴言・職員への他害行為・物の破壊等がみられる。 仮説 症例の抱く不安がネガティブな思考を生み、それが立腹につながっていると考えた。よって、リフレーミングによる介入を行うことで、立腹程度の軽減につながるのではないかと考えた。 方法および結果 介入前のベース期として計9回、リフレーミング介入期に計9回、言語療法実施前後に立腹評価を行い、変化をみた。立腹程度は独自に作成した5段階尺度で評価した。実施後、二群間を統計処理した結果、有意差5%で有意差を認めた。 考察 リフレーミングによる介入を行った結果、立腹程度を軽減することが出来た。これは、リフレーミングの前向きに導く受け応えにより、症例のネガティブな思考が軽減し、安心感と落ち着きを取り戻すきっかけが出来たと考える。しかし、非常に立腹している状態のときには、落ち着かせるのに時間を要したため、リフレーミングの効果を得られにくいことがあった。そのため、普段から立腹状態がひどくならないよう、リフレーミングによるポジティブな視点からの関わりを継続していくことで、穏やかに過ごせる時間が増えると考える。

著者関連情報
© 2017 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top