抄録
目的 右肩関節脱臼がある患者の再脱臼を予防し抗重力姿勢保持をすることで排痰援助ができるか検証する。 方法 研究期間:平成28年10月〜12月 対象:30歳代女性、153cm・体重32.kg、BMI:13.8 診断名:脳性麻痺、最重度知的障害、左脳梗塞、食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎 既往歴:左上椀骨幹部骨折、右肩関節前方脱臼、肺炎、右肺膿瘍 身体的特徴:右凸側彎78度、股関節脱臼なし、脳梗塞後の後遺症として右上肢麻痺、左上肢は顔を擦る動作あり拘束中。 ADL:自力体位変換不可、基本的動作全介助 方法:1.右肩関節の再脱臼予防のため、体位を可視化したシートを作成。2.抗重力姿勢保持にクッションチェアーを用いて2回/週、30分間座位姿勢を保持。3.実施前と実施30分後のSpO2値、肺副雑音の有無と部位、痰の性状・色・量、筋緊張の有無、表情の変化を比較。 結果 右上肢軽度屈曲・内旋位を保持し再脱臼なし。抗重力姿勢保持実施前と実施30分後を15回比較した結果、SpO2変化: 11回上昇、変化なし3回。喀痰(前:中量):中量11回・多量4回、色・性状:変化なし。筋緊張:頭部の隙間にクッションを挟み筋緊張が緩和。肺副雑音:肺下葉から肺上葉部に移。表情:変化なし 考察 姿勢制限がある患者に、抗重力姿勢を保持することは効果があった。その理由は、重力で横隔膜が骨盤方向に下がり胸腔内体積が広がることでガス交換をより多く行うことができ、SpO2が上昇したと考える。また、既往に逆流性食道炎があり、重力を利用し胃液の逆流を防ぐことで、胃内容物や唾液による誤嚥を予防できたと考えられる。そして、体に触られたり動かされる不安や恐怖があるため、抗重力姿勢をとった直後は筋緊張が見られたが、30分後は筋緊張なくリラックスしたことで副交感神経が優位となり、より胸郭を広げることにつながった。 結論 肩関節の脱臼により姿勢制限がある患者に対して、抗重力姿勢保持が有効的な排痰援助であった。