2019 年 44 巻 1 号 p. 47-49
Ⅰ.はじめに 当施設は大分県臼杵市に位置し、重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の入所利用者71人(2018年5月末現在・定数74床)のほか、人口179,891人(2018年3月現在)を有する大分県南部5市と、同じく人口476,868人の大分市の一部地域から、在宅利用者が、外来診療(2017年7,225人:発達外来含む)・ショートステイ(同862人・日)・生活介護など(同2,279人)を利用するために来所されている。大分県の在宅人工呼吸器利用者は大分市や別府市に集中しているが、それ以外の市町村にも若干人存在している。 このような当施設での、人工呼吸管理について報告する。 Ⅱ.人工呼吸器と心拍呼吸監視モニタの管理について 当施設では、臨床工学士は雇用できていない。そのため、人工呼吸器の機種はできるかぎり統一し、リースで運用している。この利点として、①機種の統一により操作が簡便であり、看護師の負担が軽減した;②機種の保守点検はリース業者が行う;③人工呼吸器の利用に増減を生じてもその稼働率は変わらない;④最新機種などに交換可能、などが挙げられる。その一方で、①急性増悪時などの対応はできない;②故障時の予備がない、などの欠点も挙げられる。欠点②に対しては、リース業者を県内に拠点を持つ事業者にするなどで緊急時に迅速に対応できるように配慮している。 また、人工呼吸器条件の指示は転記せず、原本をベッドサイドに持っていき、その場で確認するようにしている。 一方、心拍呼吸監視モニタ(以下、モニタ)は購入して運用しているが、必要時に買い増していることもあり、機種の統一はできていない。 運用に際しては、モニタがなぜ必要かを看護師が意識するように指導している。すなわち、モニタは急変が予測される患者の状態を監視するためであり、アラームが鳴ったら傍らにいる看護師が声を上げて駆けつけるようにしている。逆に駆けつけないのであればモニタの必要はない、という意識を持つようにしている。そのため、当施設ではアラーム音が鳴り放しているのを聞くことはまずない。 Ⅲ.長期入所児(者)に対して 当施設では、一時期、気管切開による人工呼吸(TPPV)療法児(者)が4人、マスクによる人工呼吸(NPPV)療法者が2人いたが、現時点では、それぞれ2人、1人ずつである。また、気管切開児(者)は10人で、超重症児(者)9人、準超重症児(者)12人である。これらの重症児(者)を含め、呼吸器感染症などを繰り返す入所児(者)に対し、理学療法士(PT)による呼吸理学療法(RPT)を休日などを除きほぼ毎日行っている。また気管切開児(者)に対しては、年に数回の気管支鏡検査を実施している。 気管支鏡検査は、当施設で準備した軟性内視鏡を用い、手技は当施設近隣の耳鼻科開業医に依頼している。この検査により、気管腕頭動脈瘻など気管切開に伴う重篤な合併症を事前に察知することも可能になると考える。 一方RPTは、一般的なリラクセーションや胸郭可動域訓練、体位排痰法1)2)以外にも、機械による咳介助(MI-E)3)や肺内パーカッションベンチレータ(IPV)3)を用いて気道クリアランスの維持を図るようにしている。現時点で、MI-Eは気管切開児(者)2人、気管切開なし者3人に、IPVは気管切開児(者)のみ3人に対して行っており、両方行っている気管切開者が1人いる。これらの導入により気道感染が明らかに減じたとは言えないが、過去にカフアシストを行っていて現在NPPV中の重症者も含めて、それらの経験があるため、気道感染時にはMI-Eなどの導入は速やかであった。 また、呼吸管理中は、人工呼吸器のアラーム以外にもSpO2や脈拍数のアラームは適切に設定し、不必要にアラームが鳴ることのないように徹底している。さらに、モニタのトレンド機能によるSpO2や脈拍数の夜間の変動結果を用いて人工呼吸器の条件も半年に1回程度評価している。近年、後述のTcPCO2モニタの導入も考慮している。 Ⅳ.短期入所児(者)に対して 短期入所児(者)のうちNPPV者は1人だが、排痰機能の弱い重症児(者)は少なくなく、外来でのRPTはMI-Eも含めて行っており、家庭では家族で蘇生バッグを用いた排痰訓練ができるような指導を行っている。呼吸機能の低下が予測される神経筋疾患児などは短期入所時に終夜睡眠ポリグラフィー検査も行い、呼吸器導入時期の判定の一助とした(図1)。 さらにNPPV者は、長期入所児(者)と同様に、短期入所時にモニタのトレンド機能を利用し、人工呼吸器条件を半年に1回程度評価しているが、夜間のCO2の評価は行えていなかった。今回、TcPCO2モニタにより夜間PCO2が高いことがわかり、人工呼吸器条件の変更につながった。 Ⅴ.考察・まとめ 人工呼吸器は、近年の機器の進化に伴い、より簡易かつ安全に使えるようになってきた。しかし、気道クリアランスの維持や人工呼吸器条件の評価など普段から気を付けるべき点は少なくなく、症状増悪時の備えも必要であろう。当施設ではPTを中心にRPTを行ってきたが、看護師もMI-Eを行える体制を作るなど、高年齢化し、より呼吸管理が必要となってくる重症者への対応にシフトする必要もあると考えている。