日本重症心身障害学会誌
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教育セミナー4
重症心身障害児(者)の骨粗鬆症、骨折について
酒井 朋子
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2019 年 44 巻 1 号 p. 99-104

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抄録

重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))においては、骨折が少なからず経験される。年間骨折率は2.4~4%ほどで1〜3)、骨折は下肢に発生しやすい。受傷機転は不明であることが多く、特に経管栄養者に不明例が多い。骨折の危険因子としては、抗けいれん薬の使用や経管栄養者であること、脳性麻痺の型、運動レベルと骨粗鬆症の程度、骨折歴があげられている4)5)。骨密度は小児期からすべての世代にわたり低下しており、中でも経管栄養者ではさらに低値となっている。重症児(者)骨折が疑われるときにはX線検査を行うことが望ましい。不顕性骨折の可能性もあるため、一度のレントゲンでは診断せず、1、2週後の再検査で同部に化骨形成の有無を検討することは有効である。治療においては患部の固定で十分な骨癒合が得られることが多い。予防としては、定期的に骨密度を測定し骨粗鬆症の状態を検査し、血液検査をもとにしたビタミンD、Kの補充、重症例ではビスフォスフォネート薬の使用も検討される。重度骨粗鬆症に対する認識をもつとともに、着脱しやすい洋服の選択、マンパワーの獲得やスライドボード等の介護用具の使用は有効である。

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© 2019 日本重症心身障害学会
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