抄録
はじめに
施設入所中の重症心身障害者(以下、重症者)の行動障害には個別的対応が必要であるが、介護業務の増加等の要因により十分な支援を行えていない現状がある。
目的
幼少時からつば吐き行為(以下、つば吐き)の行動障害が持続している重症者を対象に、つば吐きへの対応を目的に応用行動分析の手法を用いて検討し支援の方向性を検討する。
方法
1)研究方法:事例研究
2)対象: 脳性麻痺、重度知的障害 20歳代男性
3)研究期間:2018年4月〜2019年5月。
4)データ収集・分析方法:つば吐きの回数を測定し介入場面を選定した。その後、つば吐きの多い2場面についてABC分析を実施し、その結果から要因を推測し介入方法を検討し実施した。
倫理的配慮
所属施設の倫理委員会の承認を得た。対象者と父親に研究趣旨、研究参加は自由意思であること、拒否の場合にも何ら不利益がないこと、研究結果の公表等について文書と口頭で説明し同意書による同意を得た。
結果
つば吐きの多かった朝食前とベッドから車イスへの移乗介助時の2場面について、ABC分析を実施した。介助者がくすぐる行為等をすると、笑い、つば吐きがない場面があり、つば吐きはスタッフの関わりを要求する行為であると推察した。そこで、対象者に関わる時には声掛け、マッサージ等を実施し移乗介助等を行った。その結果、介入後のつば吐き回数は約50%に軽減した。
考察
応用行動分析を行い、対象者のつば吐きは看護師や介護スタッフの関わりが少ない時に行われることが明らかになった。対象者との交流を増やす声掛けやマッサージ等の介入によりつば吐き回数が軽減した。交流を増やす介入は、対象者の他者からの承認欲求を充足した成果であると考える。対象者との交流を増やす支援の重要性について示唆を得た。
結論
重症者のつば吐きについて応用行動分析を行い、看護師や介護スタッフの交流を増やす支援の重要性について示唆を得た。
申告すべきCOIはない。