日本重症心身障害学会誌
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P-5-06 胃瘻ボタンによる外傷性胃潰瘍を生じた先天性筋ジストロフィーの一例
丸山 幸一毛利 純子田中 修一新美 教弘加藤 純爾
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2019 年 44 巻 2 号 p. 439

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抄録
はじめに 胃瘻デバイス先端の突起が長いと相対する後壁に外傷性胃潰瘍を生じるリスクが高いと報告されているが、他の危険因子は知られていない。今回、高度の脊椎変形を伴う先天性筋ジストロフィーの一例において胃瘻ボタンによる外傷性胃潰瘍を経験した。 症例 19歳女性。先天性福山型筋ジストロフィーのため10歳で胃瘻造設、12歳で喉頭気管分離・夜間TPPVを導入されている。身長139cm、体重15.4kgと著明なるいそうあり。脊椎は側弯症(Cobb角63度)により変形し、腰椎は強く前弯し、腹部臓器は偏位していた。胃瘻孔からの胃内容物の漏出により難治性の皮膚炎を生じていた。在宅医により、胃瘻ボタンを太くするとともに腹壁へ押し付けて固定するよう管理されていた。多量の黒色胃残渣を主訴に当院を受診した。胃洗浄、絶食、PPI投与を行ったがタール便が続き、貧血が進行した。第4病日に内視鏡検査を行い、胃瘻孔に相対する部位の胃体中部後壁に胃瘻ボタンのバルーンの大きさと一致する大きな潰瘍を認めた。胃瘻チューブのバルーンを膨らませずに幽門側へ深く挿入して潰瘍への刺激を避け、保存的に経過観察した。出血は消失したが、第25病日の内視鏡検査で胃瘻チューブが潰瘍に接触する様子が確認された。全身状態の改善を待ち、細径チューブを用いて他の部位に胃瘻を再建する予定である。 考察 高度側弯による身体変形のため胃の後壁が椎体へ近接した状態において、比較的大きな胃瘻ボタンを腹壁へ圧迫固定したことにより、バルーンが後壁に接触して外傷性潰瘍を生じたと考えられる。側弯症自体が胃瘻ボタンによる外傷性胃潰瘍のリスク因子とはされていない。しかし、るいそうにより腹部前後径が短縮した重症心身障害児(者)および神経筋疾患患者においては、腹臥位などで胃瘻ボタンが圧迫されることにより外傷性胃潰瘍を発症する可能性があり、注意が必要である。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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