抄録
緒言
わが国は、医療技術の進歩と法制度による施設から在宅への移行が進められた結果、在宅で暮らす重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))が増加している。近年、より円滑にコミュニケーションを行う手段としてアサーションが注目されている。在宅重症児(者)の母親にとっても、自分も相手も大切にしながら自己表現を行うアサーションの獲得は、重要な意味をもつ。よって、本研究では在宅重症児(者)の母親がアサーションを獲得するプロセスを明らかにすることを目的に分析を行う。
方法
重症児(者)と在宅で暮らしている母親1名を対象に半構造化面接を実施し、得られたデータは修正版グラウンデット・セオリー・アプローチを用いて分析をした。倫理的配慮は、研究者が所属していた大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果
母親の年齢は50歳代であり、重症児(者)の年齢は20歳代であった。分析の結果、18の概念と4のカテゴリーが生成された。以下、概念は<>、カテゴリーは【】で示す。在宅で重症児(者)と暮らす母親は、思いを<萎縮して言えない>、<言うすべを知らない>現状から、思いを<ぐっと我慢する>といった【思っていることの表現不能】の状態であった。しかし、相手からの<思いがけない気持ちの理解>、<子どもの気持ち汲み取り>、<母の気持ち汲み取り>といった【母と子の気持ち汲み取り】と、<子どもの力を信じた特別な関わり>、<ありがたい普通対応>、<気さくな対応>、<快い受け入れ>といった【好意的対応】によって、<気持ちの前向き変化>が生じ、<素直な困った気持ちの表出>、<感謝の気持ちの表出>、<感謝できる気持ちの芽生え>へと変化して、【気付きによる素直なアサーション】を獲得していた。
考察
母親の従来から持ち備えている力を支えて、このプロセスが踏めるように支援する必要性が示唆された。
申告すべきCOIはない。