日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: SII-3
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分子医真菌学の新展開
DNA マイクロアレイによる Candida albicans のクオラムセンシングに関わる遺伝子探索
*長 環
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抄録

クオラムセンシング (QS) とは、細菌がその存在環境における菌密度を感知し、その密度に応じて病原因子遺伝子の発現を制御するシステムのことである。細菌における QS システムは主に 3 つの因子に分けられる。即ち菌密度の指標となる自己産生ホルモン様物質 (QS 分子)、QS 分子と結合する転写活性因子、および病原因子を含むターゲット因子からなっている。このように、QS システムは細菌の感染機構と関連が深く、新しい感染症治療のターゲットとして近年精力的に研究が進められている。
真菌における QS の研究は、2001 年 Nickerson らが C. albicans の培養上清中に QS 分子として farnesol を発見、単離、精製したことから注目され始めた。本菌の病原性の一つである酵母形から菌糸形への形態変換が菌密度の影響を受けることは、古くから知られている現象であるが、Nickerson らは、この現象が farnesol を介した QS システムの稼動によるものと報告した。
我々は C. albicans の形態変換機構の分子生物学的解析を行っているが、これまで研究に使用してきた JCM 9061 株は、C. albicans の研究で汎用されている SC5314 およびその派生株に比べ菌糸形成を誘導できる菌密度がかなり低いという特徴がある。我々はこの株は QS に対する感受性が高いと考え、この株を C. albicans の QS システムの機構解明に利用する計画を立てた。一方 C. albicans の全ゲノムシークエンスの公開に伴い、遺伝子を網羅的に研究することが可能になった。そこで、広範囲の遺伝子が発現する可能性のある QS 現象の解明に、網羅的な遺伝子解析のできる DNA マイクロアレイの利用が、魅力的な戦略の一つであると考え解析を行っている。
発表では細菌で明らかにされている QS システムの紹介、C. albicans で現在までに解明されている部分と問題点、前述の我々が構築した QS 実験系と DNA マイクロアレイの結果により推察されたQS関連遺伝子などを紹介する。

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© 2005 日本医真菌学会
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