日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: SII-4
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分子医真菌学の新展開
Candida 属酵母に対する抗真菌剤標的候補としての必須遺伝子群の探索
*宮川 洋三
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抄録

わが国では現在、高齢化社会を迎え易感染性宿主における日和見感染症、ヒト常在菌である病原性酵母によるカンジダ症が医療現場の深刻な問題になりつつある。われわれはその対策として、カンジダ症の主要な原因菌とされる Candida albicans および通常一倍体として増殖するために遺伝解析が容易とされる C. glabrata をおもな材料として、新たな抗真菌剤の標的となり得る必須遺伝子群の探索を試みている。
 Saccharomyces cerevisiae ではその遺伝子の約 10% が必須遺伝子とされているが、昨年、C. albicans につづき C. glabrata の全ゲノム解読が完了し、これら病原真菌についてもポストゲノムの時代に突入しつつある。これらの菌種においては、Tetracycline (Tet) による応答性遺伝子発現制御系 (TETシステム) が中山ら (Microbiol., 1998, Infect. Immun., 2000) によって確立され、必須遺伝子を解析する上でとくに有利であることが立証されている。
 われわれは抗真菌剤の有力な標的候補と考えられる必須遺伝子を効率よく分離する手段として、C. glabrata より、その必須遺伝子に変異を持つと思われる条件致死変異体としての温度感受性変異株(以下、TS 変異株)の分離を試みている。これまでに EMS 処理後のコロニーから、高温(発育制限温度)でのコロニー形成能を失った多数の TS 変異株を取得した。これらの株について性状解析を行った結果、その多くは安定性が高く、Reversion 頻度が低いこと等から、これらの変異株を宿主として C. glabrata Genomic DNA Library より各変異に対する相補性遺伝子をスクリーニングすることが充分可能であることが明らかになった。これら相補性遺伝子は必須遺伝子である可能性が高いと考えられる。さらにわれわれはこれとは別に、TET システムを用いることにより、C. albicans および C. glabrata のリン酸代謝制御系における負の制御因子 PHO85 の必須性についても in vitro, in vivo の両面からの検討を試みている。これらの遺伝子必須性が TET システムにより証明されれば、抗真菌剤開発に際しての有力な標的候補になるものと考えられる。
共同研究者:冨士原浩介1, 原 貴彦1, 河邉 亮1, 花田 零1,
      宇野 潤2, 知花博治2, 三上 襄2, 中山浩伸3
     (1山梨大・生命工学, 2千葉大・真菌センター, 3鈴鹿高専・生物応用化学)

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© 2005 日本医真菌学会
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