日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: SIV-5
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真菌感染と自然免疫
自然免疫リンパ球による真菌感染防御の協調的制御
*川上 和義
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抄録

クリプトコッカスは細胞内寄生真菌と考えられており、その感染防御には細胞性免疫、すなわち Th1 依存性の免疫応答が必須である。実際、本感染症はエイズや血液悪性疾患など細胞性免疫能が低下した患者において大きな問題となる。マウスを用いた動物モデルでも、Th1 関連サイトカイン産生が障害されると肺感染が悪化し、高頻度に中枢神経系への播種性感染がみられるようになる。逆に、Th1 関連サイトカインの投与によって感染防御能の亢進が認められる。 従来、自然免疫は獲得免疫が成立するまでの「繋ぎ」として機能する非特異的な防御免疫機構ととらえられていた。しかし、自然免疫の時期に起こる様々な反応が、その後の獲得免疫応答の「質」、すなわち Th1 型か Th2 型かを決定する重要なイベントであることが明らかになってきた。NKT 細胞および γδT 細胞はこの時期に活性化を受け、種々のサイトカインを産生することで免疫調節作用を発揮することが知られている自然免疫リンパ球である。我々の研究では、Vα14+NKT 細胞あるいは γδT 細胞を欠損したマウスを用いて、クリプトコッカス感染防御におけるこれらリンパ球の役割について解析を行っている。経気道的にクリプトコッカスを感染させたマウスでは、それぞれ MCP-1 依存的、非依存的に両リンパ球の肺内および所属リンパ節への集積が認められた。NKT 細胞欠損マウスでは、IFN-γ 産生とともに遅延型過敏反応の低下がみられ、肺内からの真菌の排除が有意に障害された。逆に、NKT 細胞の特異的活性化物質である α ガラクトシルセラミドを投与されたマウスでは、IFN-γ 産生の増加とともに真菌の排除が有意に促進された。一方、γδT 細胞を欠損したマウスでは、クリプトコッカス感染後の IFN-γ 産生が増加し、感染防御能が有意に亢進した。この時 IL-4 および IL-10 産生には影響はみられず、TGF-β 産生が有意に低下していた。 これまでの結果から、自然免疫リンパ球である Vα14+NKT 細胞と γδT 細胞が互いに反対の作用を示すことにより、クリプトコッカスに対する感染防御を協調的に制御していることが明らかになった。これは、Vα14+NKT 細胞による過剰な防御免疫応答(炎症反応)を γδT 細胞が調節している可能性を示唆している。現時点では、これらの分子機構は不明であるが、今後は両リンパ球によるクリプトコッカス抗原の認識機構が解明されることによってさらにその理解が深まるものと期待される。

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© 2005 日本医真菌学会
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