爪白癬の起因菌同定は通常、サブローブドウ糖培地を用いた培養法によってなされているが、爪中の菌の多くは死菌であり、KOH 直接検鏡で陽性であっても培養成功率が低く、同定に至らないという問題点が、かねてより指摘されてきた。近年、皮膚糸状菌のリボソーム DNA 遺伝子の ITS 領域を PCR で増幅し、制限酵素分析によって同定する PCR-RFLP 法が、菌種の同定に簡便かつ迅速・正確な方法として注目されている。
今回、すでに検出された菌の同定に留まらず、PCR 法のメリットの一つである、サンプル内に存在する微量の菌を検出・同定できるという点を、爪白癬においても活かすことができないか検証してみた。
一定期間内に当院皮膚科外来を受診した爪白癬患者 100 例について、罹患爪のサンプルから直接、起因菌の DNA を抽出し、PCR-RFLP 法を用いて同定を行った。更にこれと同時に行った培養法と比較検討した結果を報告する。また、この PCR-RFLP 法の成否に関わる条件や問題点についても若干の検討を加えたのでお話しする予定である。