深在性真菌感染症は、造血幹細胞移植 (HCT) 後の感染症死亡の中で最多である。近年、発症頻度が増加している侵襲性アスペルギルス症 (IA) を中心に概説する。従来は fluconazole 予防・AMPH-B 治療が HCT 後の真菌感染対策のスタンダードとされていたが、免疫不全状態の HCT 患者では IA 発症後の生存率は 20% 以下であった。遷延性好中球減少、GVHD やステロイド投与などの危険因子がある場合、胸部 CT や血中ガラクトマナン抗原検査 (GM) を用いた IA の早期診断を試みて、治療が遅れないようにする点が重要である。Febrile neutropenia 時の empiric 治療において、liposomal AMPH-B、itraconazole、voriconazole、caspofungin などは、有効性の面で AMPH-B より劣らず、安全性が高いことが報告されている。Itraconazole の IV・OS や micafungin は、移植後の真菌感染予防において fluconazole よりも有効であると報告されている。また抗真菌剤 2 剤を用いた併用療法のデータや移植前に IA を合併した時の対策についても概説する。
今後は抗アスペルギルス作用をもつ抗真菌剤の選択肢が増えるが、CT や GM を指標とした pre-emptive 治療などの真菌感染対策を確立していく必要がある。