日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: SI-4
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難治性の深在性真菌症に対する最近のアプローチ—糸状菌感染を中心に
HIV における真菌症
*安岡 彰
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抄録

HIV 感染症の日和見感染症の中で真菌症が占める割合は高く、HIV 診療拠点病院を対象とした日和見感染症の調査ではエイズ発症疾患の第 1 位はニューモシスチス肺炎で 31.1%、第 3 位が食道カンジダ症で 14.3%、クリプトコックス症が 2.8% を占めていた。ニューモシスチス肺炎はエイズ発症疾患としてきわめて重要であるが、すでに治療指針は確立されたものがあり、適切に治療されれば死亡率は 5% 程度に抑えられる。しかし実際は診断の遅れが目立つため、早期にニューモシスチス肺炎を疑うことが重要である。カンジダ症は口腔、食道、女性性器感染として頻回にみられる。治療はアゾール系抗真菌薬で容易であるが、長期の治療にともなって薬剤耐性の問題が発生する。また HIV 感染症ではカテーテル関連カンジダ症の発生率が高いことも銘記すべきである。クリプトコックス症は HIV 感染症における難治性真菌症の一つであり、典型的な髄膜炎症状・所見を呈さないままに重篤化し、播種性病変となる場合も少なくなく、この場合の治療方法が今後の課題である。
 エイズ診断指針には含まれていないが、高度免疫不全状態ではアスペルギルス症も重要な日和見感染症である。高度免疫不全(CD<20 μl)に加えて、副腎皮質ステロイドホルモンの使用や、白血球減少の要素が加わるとリスクが高く、高度免疫不全状態で死亡した患者の剖検では、少なからずアスペルギルス感染を認める。慢性免疫不全状態で発生するため治療成績は著しく悪く、新しく登場した抗真菌薬の使用方法も含めて今後検討が必要である。
 最近では抗ウイルス薬の併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy; HAART)により、HIV 感染者の予後が大きく改善した。しかし高度免疫不全状態で発生した日和見感染症の治療成績が、HAART によって必ずしも向上しているわけではない。日和見感染症の治療薬と抗ウイルス薬の相互作用や副作用の相乗により治療が困難となる場合や、HAART を開始することにより免疫再構築症候群を発症し、原疾患のコントロールが困難になる場合がある。本症候群の治療として副腎皮質ステロイドホルモンを使用すると、新たな日和見感染症を発症するリスクも生じるなど問題も多い。本シンポジウムでは HIV に伴う真菌症の治療と、HAART の関連を中心に報告したい。

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© 2005 日本医真菌学会
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