日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: P4
会議情報

ポスター(括弧内番号はセレクテッド・シンポジウム発表を示す)
多遺伝子解析でアウトグループに位置したParacoccidioides brasiliensis IFM 54648株について
*高山 明子Itano Eiko Nakagawa佐野 文子Ono Mario Augusto鎗田 響子宮治 誠亀井 克彦西村 和子宇野 潤三上 襄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

輸入真菌症の1つパラコクシジオイデス症(Pbと略)は中南米に限局する風土病で,危険度レベル3の Paracoccidioides brasiliensis を原因菌とし,我が国では,現在までに18例の報告がある.最近,本菌種に関しても多遺伝子解析に基づいた遺伝子分類がなされ,各種遺伝子情報が充実している.今回,当センターに保存されている臨床分離株(35株)についてrRNA (ITSおよびD1/D2),glucan synthase, chitin synthase,glyoxalase I mRNA, heat shock protein 70 mRNA, 43kDa糖蛋白抗原 (gp43),urease (Ure) 遺伝子の8種について配列を決定し,クラスター解析を行ったところ,ブラジルのパラナ州Pb患者の頸部腫瘤から分離された株(IFM 54648)の配列はいずれの遺伝子においてもアウトグループに位置した.とくに P. brasiliensis の同定に有用とされているgp43では90%以下の相同性で,2004年に発表したloop mediated isothermal amplication method (LAMP法)による同定のためのプライマーセットでは増幅しないことが判明した.一方,真菌の同定に広く使用されているrRNA遺伝子の相同性は99%以上であった.本株は温度依存性の二形性変換をし,最高発育温度は38℃,酵母様細胞は多極性出芽をし,教科書的記載に一致していたことから,形態・生理学的にも本菌種を否定する要素は見当たらない.一方,近縁種の Coccidioides spp.では各種遺伝子の相同性が99%以上であっても別種としているので,今後,この株のような配列を持つ株が多く発見されると,Paracoccidioides 属菌種の新種が記載される可能性があり,新たな遺伝子同定法開発も必要である.

著者関連情報
© 2006 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top