【背景・目的】黒色真菌 Phialophora verrucosa の rDNA 解析において,多数の株でコード領域に group I intron (G-I) の挿入を認めた。本課題では系統発生,生態,疫学,また病原性などの観点から G-I について研究を行った。【材料・方法】日本,中国等8ケ国の自然界及び患者由来の P. verrucosa 33株,P. americana 7株を供試菌とし,塩基配列は primer walking 法で解析した。【結果・考察】P. verrucosa の23株で SSU,28株で LSU,またP. americana の2株で両 subunit へのイントロン挿入が認められ,挿入は SSU で5,LSU で3ケ所の特定位置で見られた。S1511 を除く他の7ケ所への挿入イントロンは G-I で,それらは IC1(S943, S1506, L798, L1923) と IE(S516, S1199, L2563) に subgroup 化された。2株(S943)に Hys-Cys box 型 homing endonuclease gene 由来の配列が認められた。両 subunit を通じ9種の挿入パターンが認められた。他菌種の G-I データを組み入れた系統樹から,種内では P. verrucosa を含め各挿入位置の G-I に,菌種間では同一挿入位置の G-I に高い相同性が検証された。病原性と挿入パターンには相関性は明示されなかったが,分離地域との関係については相関性が示唆される結果が得られた。