日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: P16
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PCR-RFLPによる臨床材料から分離される担子菌系糸状菌の同定法の検討
*遠藤 成朗三川 隆大澤 宏充
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抄録

 臨床材料より白色綿毛状を呈した担子菌系糸状菌と思われる菌類が分離される。担子菌由来の培養株は培地上で子実体を形成させることは困難である。一部の担子菌は新興真菌症起因菌として注目されており、属・種を特定することが必要である。本研究では臨床材料から分離される担子菌の同定法を構築するためにPCRで増幅したITS領域のDNAシークエンスとPCR-RFLP法を検討した。
 ITS領域のDNAシークエンス結果から供試菌20株はAgrocybe 属、Sistotrema 属、Schizophyllum 属、Trametes 属と同定された。この結果を基にITS領域を4種類の制限酵素で切断し、BioNumericsでクラスター解析した。本法での系統樹はITSのDNAシークエンスから推定される遺伝子距離とほぼ一致しており本法は種の同定に使えることが判明した。肺真菌症起因菌であるSchizophyllum commune は菌糸に棘状突起を持つ点において鑑別可能であるが、突起を作りやすい株と作りにくい株がある。本法はこれら双方の株に対して同一のパターンを示し、迅速同定が可能であることが判明した。Trametes sp.は慢性肺疾患患者より分離され、病原菌として関与している可能性も疑われた。
 PCR-RFLP法は手技も簡便で検査コストも低く、形能観察では同定困難なほとんどの担子菌に対しても同定可能であると思われる。臨床材料から検出される担子菌の同定はITS遺伝子に依ったが、子実体由来の菌体を用いた遺伝子同定や菌株の交配試験などの検証が必要と思われる。

会員外共同研究者:齋藤武文1)、前川二太郎2)、細井美往3)、鈴木真言3)、前田孝一3)、佐藤弓枝3)、金山明子3)、長谷川美幸3)、小林寅!)3)
1)国立病院機構茨城東病院、2)鳥取大学・農、3)(株)三菱化学BCL

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