日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: MII
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―わが国における医真菌学の歩み―
我が国における医真菌学の歩み:内科学領域
*森 健
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抄録

医学情報は蘭学として僅かながらオランダから入ってきていたが、所謂近代西洋医学に関する本格的な教育は、明治に入って政府のお雇い医師によって開始された。医真菌学の進歩に関して、日本医真菌学会創立10周年記念講演において、高橋吉定教授が「わが国医真菌学発展の回顧」と題し、第2次世界大戦末までを2期に分けて講演されている。即ち明治20年代から大正末までの約40年を第1期、昭和に入って終戦までを第2期とし、皮膚科領域に関するものを中心に、内科領域の真菌別本邦報告第1例についても触れておられる。それによると真菌感染症の報告は、放線菌感染症に関するものが初めで、その後接合菌症例が続いている。 戦後に至り全身性真菌感染症は、抗生物質の開発による菌交代症としてのカンジダ症、また昭和29年ビキニ環礁におけるアメリカの水爆実験で被爆した第5福竜丸の乗組員の方が白血病を発症し、アスペルギルス症で死亡されるなど極めて徐々にではあるが注目されるようになって来た。しかし演者が卒業した昭和40年代でも真菌を雑菌として扱う向きがあったのも事実である。診断に関しても、汚染を避けて病巣から採取した検体の培養で真菌を検出する以外方法が無かったが、アスペルギルス抗体検索、真菌細胞膜抗原であるmannan抗原、galactomannan抗原やCryptococcus の莢膜多糖体抗原などの抗原検索法、更にはLimulus testを応用し、定量でき治療効果の判定も可能な(1-3)-β-D-glucan抗原検索法などの血清(漿)学的補助診断法が開発されたほか、polymerase-chain reaction法による抗原検索が可能になり、真菌症の早期診断が可能になって来た。一方、治療薬として1962年amphotericin B(AMPH-B)が発売されたものの、副作用が強く十分量を投与出来ず、治療に難渋する時代が続いたが、1979年にflucytosineが発売され、両者の併用が行えるようになり、1986年にアゾール系薬剤であるmiconazole、次いでfluconazoleやitraconazole(ITCZ)が、2002年にはキャンデン系薬剤micafunginが発売され、その後fosfluconazole、voriconazoleと続き、本年6月にAMPH-Bの副作用を軽減したliposomal AMPH-B(AmBisome)が発売され、今後ITCZのoral solutionや静注剤の発売が予定されており、真菌症の治療に薬剤選択の幅が広がり、その予後が期待できるようになった。このような流れを基に、内科領域における医真菌学の歩みを述べる。

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© 2006 日本医真菌学会
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