日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: P35
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ポスター(括弧内番号はセレクテッド・シンポジウム発表を示す)
T.tonsurans によるケルスス禿瘡を生じた相撲クラブ9歳児の1例
*尾木 兵衛西本 勝太郎望月 隆
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抄録

少年相撲クラブに所属する9歳男児に生じた Trichophyton tonsurans によるKerion celsi症例を供覧する。患児へは、itraconazole 3mg/kgで36日間、griseofulvin 10mg/kgで60日間の加療を行い、病巣は瘢痕治癒した。引き続く相撲クラブの少年達や指導者の検診とブラシ法検査で、7人中5人に体部白癬が見出され、1人に頭部白癬を認めた。有症状者への治療の傍ら、クラブ関係者全員にミコナゾールシャンプー等を使用させながらブラシ法検査を繰り返している。地方都市であり情報周知の遅れがあり、偏見への危惧等から、検診未受診者や症状の隠蔽、受診の回避などがあり、検診の徹底は公式試合が差し迫るまで困難を極めた。内服薬が小児にとって比較的高価な薬とみなされ、必要性を理解できなかった親が受診を中断した症例や、皮膚科医による治療終了後に再発した症例を経験した。隣接地域の少年相撲クラブ選手の兄に、レスリング留学中の高校生が居ることが判明。間接的な菌の侵淫がなかったかどうか、分子疫学的所見を検索中であるが、社会科学的に競技者間における感染の拡大は避けがたい印象を受けた。本感染症にとり、情報の社会的周知は有効な対応の手段とも考えられた。

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© 2006 日本医真菌学会
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