日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: LI
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ランチョンセミナー I
造血器疾患における深在性真菌症対策
*神田 善伸
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抄録

造血器疾患自体によって、あるいは化学療法、免疫抑制療法、造血幹細胞移植の結果として、患者は免疫抑制状態に陥る。免疫抑制状態の程度、種類は様々であり、好中球減少、細胞性免疫の低下、液性免疫の低下、貪食能の低下などが複雑に合併することもある。感染症対策として重要なことは、患者の免疫状態を常に把握し、どのような病原微生物による感染症を生じやすいかを予測した上で、対策を考えることである。例えば、同種造血幹細胞移植直後の1ヶ月は、移植前処置の大量抗がん剤投与や全身放射線照射による好中球減少と粘膜障害が危険因子となる。移植後1ヶ月程度で好中球数や粘膜は回復するが、移植後1∼3ヶ月の期間は、急性移植片対宿主病(GVHD)および急性GVHDの治療に用いられるステロイドの投与によって細胞性免疫の回復が遷延し、好中球やマクロファージなどの貪食能が低下する。移植後3ヶ月以降の最大の危険因子は慢性GVHDであり、液性免疫が低下した状態が持続する。 造血器疾患に合併する真菌感染症で、もっとも頻度の高い原因真菌はカンジダ属とアスペルギルス属である。カンジダ属は腸管に定着しやすいが、好中球減少などの免疫抑制と抗癌剤などによる消化管粘膜障害によって血管内に侵入し、血流を介して多臓器に播種する。一方、アスペルギルス属は鼻腔や気道に定着し、好中球減少やステロイド投与などの免疫抑制状態において、肺に侵襲性病変を形成し、血管内に侵入した後に、多臓器に播種する。予防対策を考える際にも、診断時に必要な検査を選択する際にも、患者の免疫状態と、真菌の感染経路を意識して検討することが重要である。 抗真菌薬の種類は年々増加しているが、それらを適切に活用するためには、個々の薬剤の特性を十分に理解し、カンジダを標的とした抗真菌薬と、アスペルギルスにも抗菌活性を有する抗真菌薬の使い分け、毒性による使い分け、予防的投与、経験的治療、推定治療、標的治療での使い分けなどを、明確にしていくことが必要であろう。

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© 2006 日本医真菌学会
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