日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第50回 日本医真菌学会総会
セッションID: LII
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ランチョンセミナー II
皮膚糸状菌症: 概念と治療の変遷について
*五十棲 健
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抄録

1956年創立の日本医真菌学会が記念すべき第50回記念総会を迎えた。創立から現在までの約半世紀の間に、世間一般では「水虫を治せたらノーベル賞もの」という表現でその難治性を強調されていた足白癬および難治性白癬についても、今日の水準では、おおむね根治せしめることが可能な疾患となった。すなわち、この50年の間に皮膚糸状菌症は難治性疾患であった時代からまさに治療可能な時代へと変換をとげたことになる。しかしながら、「治せなかった時代」から「治せる時代」へ至る道のりは決して平坦ではない。グリセオフルビンは1939年にOxfordらによって記載されていた抗生物質であるが、これが皮膚糸状菌に有効であることが明確に記載されたのは1958年のことであり、本邦で薬価収載され、処方可能になったのは1962年のことである。これは、グリセオフルビンの有用性に気づき、臨床応用が可能となるまでに20年以上要したということを意味する。もっとも、論文発表から実用化までの期間はわずか数年であり、逆に驚異的に迅速に実用化されたともいえる。難治性白癬に実質有用なイトラコナゾールと塩酸テルビナフィンが長い年月の臨床治験を経て、治療薬の選択肢として追加されたことはさらに記憶に新しい。また、皮膚糸状菌症の概念については、過去に世界各地で用語使用の若干の混乱が認められた経緯がある。欧米と日本で使用法の差も認められる。この点に関しても、今日までに、臨床医学、真菌学を含む生物学全般、および治療の進歩により、50年前にはわかっていなかった様々な事柄が理解できるようになった。今回は、第50回記念総会であることをふまえつつ、皮膚糸状菌症の概念と治療の変遷について、現時点での総括を試みたので供覧させていただくことにしたい。会員の皆様の何がしかの参考としていただければ、至極幸いである。

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© 2006 日本医真菌学会
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