日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第51回 日本医真菌学会総会
セッションID: SYII-4
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深在性真菌症に挑む -基礎と診療のクロストーク-
深在性真菌症に挑む~内臓真菌症;基礎と診療のクロストーク~外科その他の領域の深在性真菌症
*三鴨 廣繁
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抄録

臓器移植領域以外の外科系診療科で認められる深在性真菌症はカンジダ症が中心である。2003年に第1版の深在性真菌症の診断・治療ガイドラインが公表され、2007年には改訂版である深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007が公表された。外科系領域では、第1版のガイドラインの発刊以降、深在性真菌症への認識が高まり、エビデンス創成のための研究も盛んになり、深在性真菌症治療が確実に進歩し続けている。外科系診療科で認められるカンジダ症については、Candida albicans以外のnon-albicansカンジダ属、特に、Candida glabrataの検出頻度の増加が問題視されている。基礎的検討によれば、C. albicansと比較するとC. glabrataの病原性は低いことが示されている。臨床的検討によれば、真菌性腹膜炎では、non-albicansカンジダ属でもCandida tropicalisが原因真菌であった場合には、その患者の予後が悪いことが報告されている。我々は、カンジダ属でも菌種によって小腸上皮細胞に対する細胞障害性が異なることなどを明らかにしてきた。また、深在性真菌症の診断にあたっては、欧米では、監視培養によるcolonizationの程度が重視されており、複数の検査部位からの真菌の検出例、複数回にわたる真菌学的検査陽性例、検出真菌の菌量が多い例では、ハイリスク患者として抗真菌薬治療を開始している場合が多い。真菌性腹膜炎・真菌血症などの深在性真菌症の診断における監視培養の結果の判定について検討を行い、真菌性腹膜炎などの診断にあたっては、監視培養については、2ヵ所以上を陽性として感度を上げ、そこに、血清学的補助診断法を組み合わせることにより、特異度を上げるのが望ましいことを報告してきた。さらに、深在性真菌症治療における抗真菌薬の併用療法に関しても検討を進めている。このように、外科系領域における深在性真菌症治療の進展のためには、基礎と診療のクロストークが欠かせないことを強調したい。

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© 2007 日本医真菌学会
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