日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第51回 日本医真菌学会総会
セッションID: SYIII-2
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皮膚真菌症 真菌症治療に向けた各診療科の協力体制作り(クロストーク)
眼科真菌症
*宇野 敏彦
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抄録

眼科領域における真菌症として真菌性角膜炎と真菌性眼内炎が挙げられる。後者は深在性真菌症の範疇にはいるもので、本シンポジウムの趣旨より真菌性角膜炎を主に取り上げる。
真菌性角膜炎の起因菌はCandidaFusariumを代表とする糸状菌に大別される。Candidaによるものは“都市型”とも称される。結膜嚢内に常在しており、先行する上皮障害、コンタクトレンズ装用、抗菌薬・ステロイド点眼などの要因がからみあって発症する。角膜実質を融解し進展する傾向が強く、病巣の形状は細菌によるものと鑑別は困難である。一方糸状菌によるものは“農村型”ともよばれ、土壌・草木の関連した外傷が原因であることが多い。角膜実質の層構造を破壊することなく眼内に進展するため、特徴的な所見を呈し、臨床的診断が可能である。ただし検体量も少なく糸状菌を培養同定することは容易でない。
治療は全身投与を前提とした抗真菌薬を点眼用に自家調整して行うことが多い。Candidaが起因菌であればアゾール系薬剤を中心に点眼を行い、予後は良好である。糸状菌によるものは眼科用として唯一上市されているピマリシン眼軟膏など、多剤を併用して加療するも奏功しない場合が多く、治療的角膜移植が必要になる場合もある。
角膜炎の起因菌となりうる糸状菌は多彩である。FusariumAspergillus は角膜表層から眼内へ容易に進行するのに対し、Alternariaなど、長期間角膜表層に限局するもの(“表層型”)も存在する。我々の検討では表層型の糸状菌は全株とも36℃で発育不能であり、糸状菌の温度感受性が病巣の進展を規定している可能性が考えられた。
透明組織である角膜内に病巣を形成する真菌性角膜炎は病巣の形態から得られる情報は多い。真菌性角膜炎に興味を持っていただき、また我々の現在の治療方針に対しアドバイスをいただければ幸いである。

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© 2007 日本医真菌学会
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