本学会においても比較的近年まで多くの大学皮膚科教室が皮膚真菌症をテーマとして活発に活動していたが、近年の皮膚生物学をはじめとする周辺学問の急速な進歩にともない、大学皮膚科教室の研究テーマが皮膚真菌症から一斉に遠のいた。これに呼応するように、研究とは異なる次元であるはずの、皮膚科診療に必須の真菌検査法の「伝授」の努力も軽んじられてきた感がある。皮膚科外来患者の10余%を占める真菌症の診療の重要性は以前と変わりがないにもかかわらず、真菌検査法が満足に行なわれない事による診断能力の低下が強く懸念される。真菌検査が十分に行われていないのは診療、教育の中心である大学においてさえ例外ではない(笠井、真菌誌 42:171-175, 2001)。また皮膚科教室における医真菌学教育が十分でない事が明らかにされている(松井ほか、真菌誌 42:165-170, 2001)。今回は2000年に大学皮膚科教室を対象に行われた真菌症診療の実態調査アンケート(笠井、真菌誌 42:171-175, 2001)をふまえて、今日における大学病院の真菌症診療の実態ならびに、大学病院のネットワークの必要性、望まれる診療支援の内容や医真菌学教育に関わる要望などについて、全国各大学の皮膚科教授にアンケート形式で意見を求めた。その結果をもとに、真に必要とされるネットワークの内容、実現の方策について考察し、大学病院における真菌症の診療能力向上について提言を行いたい。