日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第51回 日本医真菌学会総会
セッションID: LII-2
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皮膚真菌症の最近の話題
白癬の発症病理とその対策
*渡辺 晋一
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抄録

皮膚真菌症は外来新患患者の13%を占める頻度の高い疾患であり、その88%を白癬が占める。このように皮膚真菌症は日常ありふれた疾患であるのに、その発症メカニズムはあまり知られていない。また治療にしても抗真菌薬を塗ればよいことはわかっていても、どのように、どのくらい外用すればよいかは教科書にはあまり記載されていない。たとえば、生毛部白癬は必ず痒いが、手掌・足底に生じた白癬では必ずしも痒みを伴うわけではない。また白癬菌は角層にしか存在しないため、抗体が産生されることもないし、細胞性免疫の指標となるトリコフィチン反応も通常の白癬では陰性である。しかしそれにもかかわらず、皮疹や痒みなどの炎症症状をきたす。このような疑問を解決するために、表皮ケラチノサイトと白癬菌の混合培養実験を行った。その結果白癬菌は、生きている表皮ケラチノサイトと接触することによって、表皮ケラチノサイトからのサイトカイン・ケモカインの産生を誘導することがわかった。したがって白癬では、サイトカイン・ケモカインの産生を抑えるだけでも症状は軽減する。しかし本質的には、原因となった白癬菌を消滅させないと治癒に結びつかない。そこで、抗真菌薬で直接真菌をたたくことが治療の第一選択となる。一般に角層の薄い所に生じた生毛部白癬では、2週間程度の抗真菌薬の外用で済むが、足白癬のように角層が厚い所に生じた白癬では、2週間の外用で済むことはない。しかも白癬菌が存在していても、生きている表皮ケラチノサイトと接触しない限り、炎症症状を生じないため、自覚症状がない部位も存在する可能性がある。そのため足白癬では、趾間から足底全体にかけて、塗り残しなく毎日、4週間以上外用しないと治癒しない。しかし、このようにきちんと外用しても、翌年になると、再発する人が多い。これは家庭内に散布された白癬菌や家庭内同居人の足白癬、爪白癬からの再感染である。

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© 2007 日本医真菌学会
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