近年EBMが提唱され、従来の治療が大きくかわってきた。そしてその成果を取り入れたガイドラインが数多く作成され、皮膚科新患患者の12.3%を占める皮膚真菌症の分野でもこの要望が強くなってきた。このような背景で本ガイドラインは作成されることになったが、当初日本皮膚科学会からは「皮膚真菌症管理治療ガイドライン」という仮称で作成を依頼されていた。しかし、治療の根拠となる診断の方にも少なからず問題を抱えていることから、「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」と名称を変えて、日本医真菌学会と共同で作成することになった。本ガイドラインは,既に海外で発表された同様のガイドラインを参考にしており、Q&A様式にはなっていない。まずこのガイドラインでは、直接鏡検もしくは培養の結果から診断を下すことを強調しているが、これは英国の爪真菌症治療のガイドラインでも指摘されている。さらにわが国のガイドラインでは、具体的な直接鏡検の手順も詳しく解説している。治療に関しては、外用抗真菌薬が皮膚真菌症の第一選択薬であるが、外用薬が十分浸透しない病型(真菌が爪や毛に寄生した場合や角質増殖型の病変など)では経口抗真菌薬を第一選択としている。経口抗真菌薬はわが国ではグリセオフルビン、イトラコナゾール、テルビナフィンがあるが、海外では治験結果から、爪真菌症に対してはテルビナフィンを第一選択薬とし、イトラコナゾールを代替治療薬としている。しかしわが国でのテルビナフィンの投与量は海外の半分であるため、海外の治験データをそのまま適応することができない。そこで、爪白癬の治療に関しては、短期間で治療を終了させなければならない場合はイトラコナゾール,時間がかかっても治癒を優先する場合はテルビナフィンという選択肢が現段階での結論と考えられる。いずれ、わが国の保険で認められた投与量での二重盲検比較試験が必要になると思われる。