日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: MS-1
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モーニングセミナー1
足白癬の治療のゴールは何か?
*田邉 洋
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抄録

足白癬は、皮膚科臨床ではCommon diseaseに位置付けられ、その診断方法や治療方法はほぼ確立されています。新規外用抗真菌剤も次々と開発され昨今はOTC薬として購入も容易になりました。それにもかかわらず足白癬患者は減少せず、新規患者再発患者は依然発生しています。耐性菌はなく強力な殺菌性の薬剤があるにもかかわらず未だ制圧できない難治な足白癬は、他の感染症と比較し特異な印象を持ちます。足白癬が難治な理由は多方面から議論されてきましたが、ここで「難治」の意味を考慮してみると、足白癬が「治癒」するのがどういう状態なのか未だ明確でないことが問題ではないでしょうか。足白癬の治癒とは、真菌学的に陰性のことか、かゆみが無くなることか、鱗屑が消失して元の皮膚に戻ることか、1日1回3ヶ月塗った時点なのか、諸先生方はどう判断されているでしょうか? 日常診療では普段あまり時間をかけない足白癬患者に対して、一度ゆっくり話をきいてみると、さまざまな事情があり、それぞれの治療に対する要望が異なることがわかります。治療のゴールも画一的でなく、「1日1回3ヶ月間塗布する」がなかなか困難な事例もあります。 足白癬治療の選択肢は多数できた今日、それに伴って患者の選択肢も多様にあるはずです。皮膚科専門医や真菌に造詣のある臨床医の方々は足白癬患者にこそ5分以上は(?)診察時間をとって患者の性格や生活背景を聴取し、それに応じて治療のゴールや期間の目安を定めてはどうでしょうか?今回のセミナーでは、当方で経験した難治性足白癬患者の諸事情を供覧し、最近当方で試みている足白癬患者との治療契約について紹介します。昨今の厳しい医療情勢の中で、差別化できる白癬治療について提案できれば良いと思います。

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© 2008 日本医真菌学会
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