日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: LS-1-1
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T.tonsurans感染症 完全制覇に向けて
白癬と免疫
*石橋 芳雄
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抄録

白癬は、MicrosporumTrichophytonEpidermophytonなどの皮膚糸状菌によって皮膚角質層、髪あるいは爪が侵される表在性真菌症である。白癬は、その原因菌により炎症反応が異なり、臨床症状も多彩である。ヒト好性菌は炎症が軽微であるが、動物好性菌では強い。特に今日流行しているヒト好性菌のTrichophyton tonsurans感染症は、感染力が強いにもかかわらず症状は軽微であるため感染が拡大している。白癬に対する免疫応答については不明な点が多く残されているが、その感染防御において細胞性免疫の重要性が明らかにされている。また近年、皮膚組織の構成細胞であるケラチノサイトから様々なサイトカインが分泌されることが見出され、皮膚は微生物の侵入を防ぐための単なる物理的なバリアーとしてだけでなく炎症や免疫応答を調節する役割を演じていることが明らかになってきた。我々はヒト好性菌であるT. tonsuransと動物好性菌のArthoroderma benhamiaeについて、それらの刺激による表皮ケラチノサイトからのサイトカイン分泌を比較検討した。その結果、A. benhamiaeではIL-1β、IL-6、IL-8など多くの炎症性サイトカインで有意な分泌亢進が認められたが、T. tonsuransでは、IL-8など限られたサイトカインしか分泌されないことが明らかになった。このことから、T. tonsurans感染症とA. benhamiae感染症との臨床症状の差には、表皮ケラチノサイトにおけるサイトカイン応答の違いが関与している可能性が示唆された。白癬に対するワクチン療法としては、獣医領域において、T. verrucosumおよびM. canisに対するワクチンの開発が報告されている。また、すでに一部の国では、ウシの感染管理のために実用化されて効果を上げており、ヒトの臨床応用への検討が待たれている。このセミナーでは、白癬に対する自然免疫および獲得免疫について述べるとともに、T. tonsurans感染症のワクチン療法の可能性についてもふれたい。

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© 2008 日本医真菌学会
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