Candida albicansの医真菌学における重要性は、内蔵真菌症の主要な起因菌であることには、異論はない。しかしながら、ヒトとの生物学的な関わりは、むしろ消化管を中心とした粘膜ですむ真菌とそれを許す宿主としてのヒトのあり方として存在すると考える。健康な成人に寄生しているC.albicansは、酵母形と菌糸形の2形成をとりながら、ヒト粘膜上でそれほどの害を与えず生き続け、伝播し、生態系を作っている。それには、farnesolなどのquorum sensing物質の産生が関与していると考えられる。生態側の防御能としては、組織侵襲性の強い菌糸形発育の阻止とCandidaが粘膜に付着の阻止、さらに侵入するのを防ぐ増殖抑制、粘膜外層の剥離などが防御機構のおもなものである。口腔を含める消化管では、粘膜に接する液体が流れるため、主に付着を抑制する作用が防御力にしめる割合が高いと考えられる。唾液などの外分泌液、腸内細菌の産生物質などがそれに寄与している。一方、膣腔などでは、むしろ粘膜を覆う上皮細胞自体の防御力や、分泌液中にある白血球やラクトフェリンが防御力として重要であろう。デフェンシンなどの抗菌ぺプチドも、塩濃度が、血液より低い唾液・気管支粘液などにC.albicanが存在している場合には抗菌活性を発揮するが、一度粘膜内にC.albicanが侵入するとその作用はマクログロブリンなどにより抑制される。粘膜内に侵入したC.albicansは、好中球を中心とする炎症性細胞の集ぞくをおこし、それらによって抗菌作用をうける。それらの機構についての最近の知見を中心にまとめてみる。