日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: SY-2-2
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真菌感染と皮膚粘膜免疫研究の現状と展望
宿主からの攻撃に対抗するAspergillus fumigatusの戦略―具有する飛び道具と鎧―
*豊留 孝仁渡辺 哲亀井 克彦
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抄録

ヒトは絶えず、環境中の微生物と生存をかけて競争を行っている。その侵入門戸のうちでも、特に肺は環境中から吸入された真菌に常にさらされている。健常人では吸入された菌体が速やかに生体防御機構により排除されるが、免疫機能が破綻するとその防御機構を突破し、定着・全身への播種へと進み、ヒトの体を制圧する。しかし、真菌の中でも真菌症原因真菌は限られており、Aspergillus fumigatusを始めとする主要な病原真菌では何らかの特別な病原因子、感染成立のためのメカニズムが存在するのではないかと考えられている。A. fumigatusにおいては、いくつかの病原性を規定する要因があるが、我々は(1)菌体外に放出される二次代謝産物の病原因子としての役割、(2)β-グルカン構造の被覆による宿主からの認識回避を中心に研究を行っており、これらを中心にお話ししたい。(1)Aspergillus属菌はそれぞれ特徴的な二次代謝産物を産生・放出し、A. fumigatusも例外ではない。さらにこれまでに報告してきたように培養上清は強力なアポトーシス誘導活性を有している。現在までにマクロファージなどの生体防御に関わる細胞群のみならず、肺の上皮細胞をも傷害することが分かってきており、肺における物理的バリアーも免疫学的バリアーも破壊しながら感染成立へ向けてA. fumigatusが邁進している様子が窺える。(2)真菌の細胞壁成分は病原体関連分子パターン(PAMPs)として宿主が病原体を認識する格好の標的である。その中でもβ-グルカンは宿主細胞において炎症性サイトカインの産生誘導を起こす、主要なPAMPsである。A. fumigatusのβ-グルカン構造は膨化分生子と呼ぶ1ステージにおいて強く露出される。一方、菌糸においてこの構造が露出しないようにすることが宿主からの攻撃を回避する機構として働いているのではないかと考えられるようになってきている。(共同研究者:千葉大学真菌医学研究センター真菌感染・岩崎彩)

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© 2008 日本医真菌学会
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