多文化関係学
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関係流動性ならびに文化的自己観と集団表象の関連が内集団他者に対する自己謙遜表出に及ぼす影響 : 日本的コミュニケーション・スキルの媒介効果
船越 理沙潮村 公弘
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2013 年 10 巻 p. 103-115

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抄録

本研究では、個人を取り巻く関係流動性および文化的自己観と集団表象(common identity group表象とcommon bond group表象)との関連が、内集団他者に対する自己謙遜表出に及ぼす影響を検証した。さらに、自己謙遜表出には日本文化における文化依存的なコミュニケーション・スキルが媒介変数として機能していると予測し、日本的コミュニケーション・スキルについても取り上げて検討した。女子大学生205名の回答が分析に投入された。共分散構造分析によるパス解析の結果、特徴的な知見として、関係流動性が高いことは、相互協調性を抑制することを媒介してcommon bond group表象を抑制する一方で、直接的にcommon bond group表象を促進しているとともに、自己謙遜表出の程度を直接に規定していた。また、内集団をcommon bond group表象としてとらえていることは、内集団他者に対する自己謙遜表出に対して相異なる2つの影響関係を有していることが見出された。具体的には、内集団をcommon bond group表象としてとらえていることは、自己抑制能力を促進することを媒介して自己謙遜表出の程度を促進していた。その一方で、内集団をcommon bond group表象としてとらえていることは内集団他者に対する自己謙遜表出の程度を低減させるという直接的な影響関係が示された。本研究結果について、内集団に対する適応価値や集団表象の志向性の観点から考察がなされた。

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© 2013 多文化関係学会
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