日本栄養・食糧学会誌
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霊芝菌糸体培養培地抽出物の糖負荷後の血糖上昇抑制効果と食後過血糖改善薬との併用効果
臼井 達洋岡崎 真理神内 伸也鈴木 史子飯塚 博日比野 康英
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2007 年 60 巻 5 号 p. 249-255

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抄録

霊芝菌糸体培養培地抽出物 (WER) は, 霊芝菌糸体を固形培地に接種し, 一定期間培養後, 子実体発生直前に培地と共に熱水抽出・凍結乾燥したものである。今回, 血糖値上昇に対するWERの影響を検討するために, マウスにWERを経口投与した後, 糖負荷を行い血糖値の変化を観察した。またin vitro において, WERの糖質分解酵素に対する阻害活性を調査した。さらに, 食後過血糖改善薬 (α-グルコシダーゼ阻害薬 : ボグリボース) とWERとの併用効果について検討した。WER (1g/kg) の単独経口投与は, マウスの血糖値に影響しなかったが, マルトース負荷30分前にWERを投与すると, 蒸留水を投与した対照群と比較して, マルトース負荷後30分および60分の血糖値上昇が抑制された。WER投与群の血糖値曲線下面積は, 対照群と比較して約20%減少した。また, 可溶性デンプンを負荷した場合においても, WER投与群の血糖値曲線下面積は15%減少した。これに対して, スクロースおよびグルコースを負荷した場合では, WER投与群と対照群との間に有意な差はみられなかった。In vitro において, WERはマルターゼ, α-アミラーゼ, およびスクラーゼの活性を濃度依存的に阻害した。これらの結果から, WERは小腸において糖質分解酵素活性を阻害し, 単糖の腸管からの吸収を低下させることが示唆された。加えて, WERとボグリボース混合液のマルターゼ阻害作用は, ボグリボースが低濃度 (0.035μg/mL) の場合はWERの濃度に依存して増強したものの, マウスにおける糖負荷実験においては, ボグリボースの効果量 (0.1mg/kg) とWER (1g/kg) の併用による効果の増強は認められなかった。したがって, 効果量の薬剤とWERを併用しても過度の血糖降下作用がないことから, WERと上記薬剤の同時服用における安全性を確認することができた。

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© 2007 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
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