2008 年 61 巻 1 号 p. 21-26
アトピー性皮膚炎患者のほとんどは,乾燥肌,バリア機能の低下および皮膚炎症状がみられる。HR-1ヘアレスマウスは,皮膚にダメージを与える特殊な誘導食(HR-AD)によって,アトピー性皮膚炎様所見を示すことが知られている。本研究では,このモデルを用いて,グルコシルセラミドを高濃度含有するタモギタケエタノール抽出物(以下,タモギタケエキス,と記載する)の混餌投与がアトピー性皮膚炎様所見にどのような影響を与えるかを検討した。その結果,対照群(HR-AD投与群)では,皮膚水分蒸散量(TEWL)の経時的増加,角化亢進および真皮への細胞浸潤が認められるなど,典型的なアトピー性皮膚炎様所見を示した。それに対してタモギタケエキス投与群では,アトピー性皮膚炎様所見についていずれも改善する効果を示した(タモギタケエキスの投与量はセラミドとして0.1%および0.01%)。タモギタケエキスの混餌投与は,アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた実験系において,皮膚のバリアー機能を改善し,対照群で認められた皮膚炎症状の発症を抑制する作用を示したと予想される。