2008 年 61 巻 3 号 p. 119-127
糖尿病は体内の酸化ストレスを増大させ,一過性脳虚血による脳障害を増悪させることが報告されている。本研究では,ストレプトゾトシン糖尿病態(DM)ラットを用い,一過性脳虚血処置による脳障害に対する霊芝菌糸体培養培地抽出物(WER)の効果を検討した。正常血糖(non-DM)およびDMラットに,WER(1 g/kg)または蒸留水を1日1回2週間経口投与した後,体内の酸化ストレス度,脳組織中の過酸化脂質含量および抗酸化酵素活性を測定した。また,ラットに中大脳動脈閉塞/再潅流(MCAO/Re)処置を行い,神経症状の評価および脳梗塞巣体積の測定を行った。その結果,DMラットでは体内の酸化ストレス度の上昇,脳組織中の過酸化脂質含量の増加および抗酸化酵素活性の低下がみられた。WERを投与したDMラットでは,これらの値が正常レベルに維持されていた。さらに,DMラットでは,non-DM群と比較し,MCAO/Re後の神経症状の悪化および脳梗塞巣体積の顕著な増大が認められたが,WERの投与により,脳障害の増悪がほぼ完全に抑制された。以上の結果から,WERは糖尿病における酸化ストレス状態を改善し,一過性脳虚血に対して強い脳保護効果を示すことが明らかになった。