2011 年 64 巻 6 号 p. 367-376
消化管を舞台として, 吸収されずに生理作用を発揮する食品成分として, 食物繊維などの難消化性糖質が知られるが, これに難消化性ペプチドが加わった。本研究では, 食品成分を情報分子としてとらえ, それらが消化管において, 生活習慣病やメタボリック症候群の発症に係わる生体機能を制御していることを示した。具体的には, 難消化性糖質が小腸タイトジャンクションを介した経路により, カルシウムや鉄の吸収を強く促進する機構を明らかにした。また, 難消化性オリゴ糖の大腸発酵を介した作用として, フラボノイド配糖体の生体利用性を強く促進すること, 大腸のバリア機能を強化することを, それらの機構を含めて明らかにした。難消化性食品ペプチドが消化管腔内で上皮細胞に作用して, 食欲に関係する消化管ホルモンであるコレシストキニンの分泌を刺激することを見いだし, 大豆たんぱく質中にその有効なペプチド配列を同定した。また食品ペプチドを認識する分子機構の一端を明らかにした。