栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
老人ならびに児童の低栄養に対する適応に関する研究
(第2報) 低栄養が児童の成長と生理機能に及ぼす影響について
吉川 一弥
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1959 年 12 巻 4 号 p. 295-303

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抄録

1956年夏期2ヵ月間にわたり養護施設収容兜童 (6年~15年) 男子259名, 女子219名, 計478名を対象とし, その食餌摂取量と身体発育ならびに生理機能との関係について検討してつぎの成績をえた。
1) 施設児童の男女平均 (全平均年令10.3年) 食餌摂取量は熱量約1640Cal, 蛋白質約549 (動物性31%) であり, 所要量に対してそれぞれ約15%および約20%の不足となる。
2) 一方その身体発育を大阪府下児童平均と比較すると, 身長で約5%, 体重で約10%ないし約20%におよぶ発育遅延がみられ, これにともない体力低下がみとめられた。
3) 施設児童の基礎代謝は6~8才の低年令にやや低いが, 一般にほぼ正常値を維持している。またクレアチニン排泄量をはじめ, 血清蛋白濃度, ヘモグロビン濃度あるいはA/G比など血液蛋白性状もほぼ正常値の範囲にあつた。
4) 以上から, 兜童の低栄養適応の第1徴候は発育遅延, ことに体重減少であり, 生理機能にはその影響のあらわれがたいことを知つた。これは老人の低栄養適応がおもに基礎代謝の低下によるという前報成績と著しく対照的であり, 栄養学的ならびに生理学的に興味深い事実である。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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