情緒的ストレスによるCa選択の増加の意義を検討するために, ラッテに回避条件づけを行ない, 不安行動との対応を求めつつ, 尿中に排泄されるCa量を測定した。実験期間は, ストレス前の対照期・15, ストレス前期 (条件づけ) ・10, ストレス後期 (消法) ・10, ストレス後の対照期・15日の50日間である。全実験期間中, 基本飼料を自由に与え, また条件づけは, ブザーと電撃を1日20回与えた。
その結果, 両ストレス期に著しい不安行動がみられ, これに対応して, Caの尿中排泄が徐々に減少した。この間に, 摂食量は急速に減少し, 体重の増加は停滞した。Caの摂取量は, 摂食量の減少に伴って減少したが, 尿中排泄量は, さらに著しい減少を示した。すなわち, Caの尿中排泄量は, ストレスにより徐々に減少しはじめ, ストレス後期に最少値に達し, その後回復への傾向を示している。
Caの摂取量に対する尿中排泄率は, ストレスの初期には, 全く変動を示さず, 後期に入って, 徐々に減少しストレス後期の最初に最少値 (27%の減少) に達し, その後回復した。
すなわちCa排泄の変動は, 窒素の場合に比べて, 緩徐に現われ, グルコースに比べて, 急速に起こった。また排泄の変動の大きさは, 窒素およびグルコースの場合に比べて, はるかに小さかった。
以上の結果を総合して, 前報に報告した情緒的ストレスによるCaの選択量の増加は, Caの排泄率減少と相まって, Caの体内貯留を意味するものと考えられる。